人の心を大切に思い、心を豊かにすることが教育の根幹であると思います。自分が己の心を大切に思うのと同じように、他の人もその心を大切に思うことを尊重することも含んでいます。
人の体力は機械に追い抜かれ、昨今は、記憶力、思考力もビッグデータ、AIに抜かれた感があります。しかし、人の心は達成感、向上欲、愛、喜び、サービス心、忍耐力、悲しみ、などの様々な感情を生身に湧き上がる感覚として感じることができます。そして、高段者がAIに敗れた将棋、碁、日本人が最近はじめて10秒を切った100メートル競走などは、人間同士の技の競い合いにおいて、高みへの挑戦、心の葛藤、喜び、悔しさなどがあり、それを通して心を豊かにできるところに意義があると思います。しかし、AIロボットは、ある条件が揃えば嬉しい表情をし、別の条件下では悲しい表情をすると、仕組まれていますが、肌身でこのような感情を感じることはありません。
2020年教育改革で思考力重視の方針が出されていますが、記憶力と思考力とは、両者相俟って豊かな心を築くものであり、一方に偏りすぎないように配慮すべきと考えます。人の頭脳は、記憶された情報を思い起こし、学術、技術、芸術、スポーツなどにおける思考・創造活動を無意識の内に行っていると言われています。従って、必要な情報がインターネットから容易に検索可能であるとしても、豊富な知識、経験が頭脳に記憶されていることによって高度な思考力も発揮できるのではないでしょうか。