人間の価値観と個人の価値観を保障する国家の価値観を

今回のコロナウイルス対策において、ノーベル賞受賞学者、医者、科学者を含む多くの国民がSNSで政策提言されていました。

旧態依然とした国家の価値観から決別するために、国民が国家に期待する政策をSNSなどの情報技術を利用して実名で提案し、各分野の専門家で構成した中立的な組織で集約して国政に反映する仕組み、いわばIT組込み民主制(IT Incorporated Democracy)を作りたいものです。

今回は、その前提となる人間の価値観と個人の価値観と国家の価値観について考えてみました。

人間の価値観

創造主から託された人間の価値観は、生きる歓びをより多くの人々が体感することです。

人間の基本的な価値観である真・善・美は、人間が物質の世界で生きる歓びを体感するための法則です。

創造主は、無の対極にある有(存在)を強く共感するために、個性の異なる多くの人々が真・善・美をいろいろな形で実現し、生きる歓びを体感することを人間に託されたと思います。

真は、嘘偽りのない本当のこと、真理、自然法則などで、存在し続ける或いは生き続けることの根底にある真理です。

善は、人の役に立つ、協力する、他人を尊重する、誠実である、自然を大切にするなど、人々が共存するための道徳的な原則です。

美は、文化や自然において現出される事象の変化や調和で、多くの人に感動、勇気、快感などを与えて、生きることに意欲と魅力を与える原動です。

個人の価値観

個人の価値観は、各個人が人間の価値観を自分に適合させて展開するものです。人間は、各自の能力、興味、環境などで異なる概念の世界を脳内に構築し他人と共有する能力を有するので、それぞれの個性に基づいた個人の価値観を各自の脳内に形成します。

人は、他人や集団から押付けられた目標でなく、自分の価値観を実現するための目標を達成したときに大きな歓びを感じます。

集団の価値観に賛同して個人の価値観とした人々が、この集団の価値観を実現するための目標を共に達成することに大きな歓びを感じることも真実です。

人間の価値観は、多くの人々が生きる歓びを体感することであるので、各人が他人の価値観の実現を妨害すること、或いは他人の存在を否定することは絶対許されないことであります。異質な価値観に賛同する必要はありませんが、その存在を認めることは、人間の価値観が求めることです。

古い国家の価値観

権威主義体制、全体主義体制、民主主義体制など政治体制に様々な試みがなされてきましたが、正解は未だに見つかりません。

大国の野心ある指導者は、ローマ帝国以来、自分への権力集中と利己的な価値観の実現のために、国家の価値観を覇権主義に置き、戦争を前提とする覇権争いを国民の生きる歓びを犠牲にして繰り返してきました。

共産主義国家は、人間の精神的自由を犠牲にしても、国が経済的に発展することによって報酬を平等に分配することを目指しています。

民主主義国家においても、格差の拡大、利己主義の横行、国家機関の硬直化が進んでいます。

このような国民の犠牲の上に成り立つ国家の価値観は、より多くの国民が真、善、美に基づいた個人の価値観ひいては人間の価値観を実現することを保障するという国民の期待する国家の価値観ではありません。

現在の内外の政治家の真理や道義が無く、美学を感じない言動には、社会に与える影響が大きいだけに、国家の価値観が創造主から託された人間の価値観から大きく乖離していく危機感を感じます。

最近、日本においても、民意(国民の価値観)から乖離した政策(国家の価値観)が強行されていることに危惧を感じます。

新しい国家の価値観

経済的に豊かになり、情報技術か高度に発達した近代社会において、国民が国家に委託しなければならない事項は変化し、国家の価値観も社会の変化に応じて変えていかなければなりません。

国民が国家に期待することは、他の国より軍事力で強くなることではありません。強い国の国民であることによって、いわれなき自信を持つことはできるでしょうが、個人にとっては裏付けのあるものではなく、世界に通じる人間の価値観の実現を妨げる妄想にすぎません。

国家に求めるものは、より多くの国民が、個人の能力、興味に応じて活動できる場所と環境を提供することであり、個人の価値観を実現するための生活に必要な収入を得ることができて、各自が目標を達成する歓びを実感できる社会の仕組を考案し、実施することです。

多くの国民が個人の価値観を実現する歓びを実感できる国家は、各国民が裏付けのある自己肯定感に満ち、おのずから強い国家になります。

社会の複雑化と組織の硬直化に対抗するために、ITを活用して日本の民主制に直接民主主義的要素を加味し、国民が期待する国家の価値観を実現可能な新しい民主制を模索するときではないでしょうか。