基礎的な学習内容

今月は、先月投稿した共生主義日本国の教育システムを通して、若い人が学ぶと人生をより楽しむことができると思われる基礎的な学習内容を提案します。

例えば、母親が娘に留守番を頼むときに、「あなたの側にいる実体の母は出かけるけれど、あなたの頭の中にはあなたが覚えた母の顔や臭いが概念の世界の母としているから、淋しくなると思い出して我慢してね。」、「あなたと兄さんの頭の中にいる二人の母さんは、似ていると思うけど、どれ位違うのかな。」等の会話を通して概念の世界を幼い子供に徐々に理解させていくことができる気がします。

幼い子供が概念の世界を理解することは難しいと思いますが、様々な工夫と経験を活かして時間をかけて理解させることが必要と思います。

人間が他の動物と大きく異なる点は、5感で感じた「実体の世界」での物事を記憶し、脳内に「概念の世界」を構築し、各自の概念の世界を言葉、絵図、音などを使って他人と共有することができることです。

人は身体、知能、心の三要素から成りたち、個々に相違する三要素に基づいた個性を有します。

そして、個人の成長段階での個性に適合した目標を設定し、この目標達成に喜びを実感しながら、三要素の総合力を成長させていくことが人の生きる意義の大きな一つであり、そのことを人はより若い時に知ることで人生をより楽しくできると思います。

生徒は学校で、国語、算数、理科、社会、体育、音楽、美術など多くの科目を学習します。

各科目で学習する対象の大まかな特徴と学習した対象をどのように利用するかについて知ると、生徒は主体的に学習するようになると思います。

人間は実体の世界における物事、例えば物、物の状態や動き、人の感情などを記憶し、記憶した物事で自分の概念の世界を構築します。

言葉は、先ず自分と他人とが同時に見聞きすることができる実体の世界における物事を表現する符号として自分と他人との間で共有されます。

そして、自分と他人は、言葉を仲介にして自分の概念の世界の物事A1と他人の概念の世界の物事A2が実体の世界における物事Aに対応するものであると認識します。

このようにして言葉は、各自がその概念の世界に記憶した現実の世界での物事や自分が創作した小説や思想などの創作物を他人の概念世界に持ち込んで共有することを可能にします。

しかし、自分と他人では同じ物事Aでも理解や興味が異なるので、自分の概念の世界の物事A1と他人の概念の世界の物事A2は同一にはなりません。

国語は、物事を約束に従って言葉で表現することを学ぶ科目ですので、理論的な面もあります。しかし、国語の対象である言葉は変化する社会の出来事や微妙な人間の感情などを表現するために変化し矛盾を内包せざるをえなくなることもあり、国語は非理論的な面もあるのでしょうか。

言葉は、現実の出来事だけでなく心の産物である感情を他人と共有するための大きな手段ですので、国語では、言葉の使い方だけでなく、他人を思いやる気持、志に向かう勇気など人の心も併せて学習できるようにするとよいのではないでしょうか。

算数で学習する対象は、概念の世界において数を約束に従って理論的に取り扱うことです。

数も実体の世界での物の個数、長さ、重さ、時間などの量を表現する言葉の一つとして各自の概念の世界に形成されるものです。四則演算も実体の世界での「加える」、「減じる」、「同じ量を複数回加える」、「一つの量を等分割する」を概念の世界において数字と符号+,-,×,÷を使って形成したものです。

概念の世界で「10進数」、「0」、「負の数」、「四則演算」、「関数」などが創作され、その後、これらと理論的に矛盾を生じない新しい考え方が次々に創作されました。

各自が概念の世界に構築した数に関する考え方や法則は、実体の世界でグラフや式として紙等に記載することによって他人の概念の世界に容易に取り込むことができます。

また、数は実体の世界で物の個数、長さ、重さ、時間などの量を示すだけでなく、異なる種類の量から別種類の量を算出し、或いは異なる種類の量の関連性を表すことができます。

例えば、数は、物体が移動した距離を表す数を移動に要した時間を表す数で割った数によって物体の移動速度を表すことができます。

今回は紙面の都合上これまでとし、主として身体を学習の対象にする体育、心を対象にする音楽や美術、実体と概念の世界の物事を対象とする理科や社会については次号に回します。