チャットGPTがオープンAIによって昨年リリースされて以来、米国では生成AIブームが起こり、マイクロソフト、アルファベット、グーグル等が開発、利用を強力に牽引しています。
日本では今秋の経済対策に生成AIの開発や利用支援策が盛り込まれました。
反面、AIの安全性に関する非営利団体であるセンター・オブ・AIセーフティー(CAIS)が、「AIによる人類絶滅のリスクを低減することを世界的な優先事項とするべきだ。」とする声明文をブログに掲載し、オープンAIのサム・アルトマンCEO、グーグル・ディープマインドのデミス・ハッサビスCEO、AIの先駆者であるジェフリー・ヒントン博士やヨシュア・ベンジオ教授など600名の主要なAI研究者と著名人がこれに署名しています。
質量とエネルギーの等価性を証明し原子エネルギーの開発に貢献したアインシュタインが、原子爆弾の恐ろしさ予知しながらも、敵国ナチスドイツの原爆開発を空想してルーズベルト大統領に早期開発を提言した史実を教訓に、生成AIの開発、利用と並行してAIの危険性対策を講じておく必要があると考えます。
CAISの声明文では、AIの兵器化、AIによる偽情報の拡散、AIによる権力の集中、人類のAI依存による衰退などを警告しています。
AIによる兵器の製造禁止、偽情報の拡散防止、生成物の著作権問題などについては信頼性の高い早急な法整備や啓蒙活動が望まれます。
人間は自分の意見をかなり強く持っている人でも、多数意見、繰り返される意見、信頼する者の意見に徐々に感化されます。
従って、長年使っている生成AIのアルゴリズムに偏向した価値観が組み込まれていると多くの使用者がその価値観に染まっていき、権力の集中に繋がることもあり得るでしょう。
また、生成AIは学習データから一見新しいコンテンツを生成しますが、学習データは既存対象をデータ化したものであるので、極めて長い期間で見ると生成AIのコンテンツは多様性を失っていくと考えます。
多くの人がAIに依存し自ら思考しなくなると、人類は多様性、延いては生き甲斐を喪失し滅亡してしまう恐れがあります。
人間は身体と知力と感情を備えています。
身体について、人間は自動車等の機械に馬力で負けましたが、身体と知力と感情を使うスポーツ等で自ら技術アップしていく面白さを体感し、機械に依存し過ぎることなく共存しています。
知力について、人間が感情を移入して創作した創作物といえども何か過去のものがベースにあります。
過去の多数のデータに基づいて生成された生成AIのコンテンツに鑑賞者が何らかの感情を感じることもあるでしょう。
このことで人間の創作物とAIのコンテンツは同じと言えるでしょうか。
創作は創作者がその時の思いを創作物に移入して表現する創作者側の行為であり、創作という行為および創作物の出来映えにもっと上手くなりたいという夢を追いかけているのだと思います。
人間は知力の一部で生成AIに負けましたが、知力と身体と感情の総合力で様々な夢を追いながら人生を楽しみ続けるでしょう。
このように人類はAIを道具として利用し、人間にふさわしい生き甲斐を見つけて生存する生命力、存続しなければならない使命を持つものだと思います。
日本では、AIの開発や利用支援策を経済対策に盛り込み、NEC、富士通、NTTなどが開発を推進しています。
欧米ではAIの規制法案の検討が強力な開発、利用と同時進行しています。
日本でも生成AIの弊害をミニマイズするための法整備、啓蒙活動を利用支援策に入れて推進されることを願います。
原子力を利用して原爆をつくり、6千個弱の核弾頭を時代錯誤な独裁者の手に委ねている愚かを繰り返さないように、生成AIの危険性排除対策を遅れなく講じつつ、生成AIを活用して貧困、病気、環境問題、3K労働などを解消し、人間が文化活動を謳歌できる社会の実現を楽しみにしています。