民主主義と選挙制度

11月5日に行われた2024年米国大統領選挙で利己主義をポピュリズムで糊塗したトランプ氏が圧勝しました。

11月11日の兵庫県知事選挙では県議会で知事の不信任決議案が全会一致で可決されて失職した斉藤元彦氏が疑惑の真偽不明の状態で当選しました。

二つの選挙で人の本性を信じた私の希望的予想は裏切られました。

自分の価値観と異なる対立集団の主張も、その構成員が抱える苦境や苦情を知り、自分も同様の苦境に立たされていると、正当なものと思われてきます。

しかし、選挙は民主主義を実現するための一つの基本手段であり、人民の「人権、自由、平等」を守った上で政治を実行する自分の代行者を選ぶ制度です。

人間は、感情が伴わないと行動せず、知性だけで行動を起こすことはないと言われています。

選挙がお祭り騒ぎのようになり、或いはSNSを駆使して人々の感情を煽動し、正常な判断力を阻害するものにすることは断じて許してはなりません。

民主主義は人民のための政治を目指し、ポピュリズムも人民第1主義を意味します。

民主主義とポピュリズムの違いは、選挙で選ばれた政治家の人格の違いにあると思います。

民主主義では政治家は真摯に人民のためを思い、ポピュリズムでは自分の利益を利己的に追求するでしょう。

ポピュリストであるヒットラーは、1929年の世界恐慌に喘ぐ議会制民主主義のヴァイマル共和国で、経済的に苦境に立つ人々を人民のためと煽動して選挙に勝利しナチス党首として首相になって権力を把握し、民主主義国家を忌まわしい独裁体制のナチスドイツ変貌しました。

人民第1主義のポピュリズムが人民のための政治を目指す民主主義を破滅させるのは奇妙なことです。

民主主義は政治家が人民のための政策を自ら考え出し人民にアピールして支持を得ようとするのに対し、ポピュリズムは対立者やその政策の欠点を人民に訴えて支持を得ようとする傾向が強い気がします。

野党はポピュリズムに陥りやすいですが、政策をしっかり提示し、人民が政策重視で選挙権を行使することが、ポピュリズムから民主主義を守るために大切なことだと思います。

トランプ氏の言動を見ていると利己的で人格的に米国大統領にふさわしいとは思えませんが、ノーベル賞受賞のために変貌することを望んでいます。

斉藤兵庫県知事の人格情報および兵庫県庁の体質に関する情報は少なく、兵庫県民が斉藤氏を再選した是非は闇の中です。

しかし、その後に発覚したPR会社による斉藤氏のSNS戦略支援に関する記事を読むと人々の感情に訴えるポピュリズムの顔が垣間見えます。

在任中は自分のためではなく、県民のために県政に邁進されることを望みます。

遺伝情報に込められたヒトが存在する意図

ヒトはたった一つの細胞(受精卵)が分裂して形成されます。

細胞は、ヒトをつくる遺伝情報の全容が記されたDNAを内包する核、細胞自体が生きるために必要なエネルギーを生成するためのミトコンドリア、遺伝情報に基づいて人体の各部位に特有なタンパク質を合成し、分裂した細胞を脳、臓器、筋肉、皮膚等を構成する細胞にするリボソーム、細胞内に進入した異物や細胞内の代謝物を消化処理するリンソーム、細胞の表面を覆う細胞膜などから構成されています。

そして、例えば脳細胞の集合体である脳は、肉体的に存続するための食欲などの生理的欲求と、社会集団での一人として存続するための承認欲求などの精神的欲求を生み出します。

一つの細胞が遺伝情報に基づいて分裂してヒトになる神秘、ヒトが遺伝情報に基づいてヒトらしく人生を楽しむ神秘は、到底偶然がもたらせることではありません。

近時医療分野で、悪い遺伝情報の記されたゲノムの一部(悪い遺伝子)を削除し、良い遺伝子に代えるゲノム編集が研究されています。

ゲノムはDNAのヒトをつくる遺伝情報の全容が記された部分です。

ヒトは既存のゲノムの悪い遺伝情報の記された遺伝子を削除することはできますが、ゲノムましてや一つの細胞を一からつくることはできません。

ヒトの細胞にはヒトゲノムがあるように、ヒト以外の例えばマウスの細胞にはマウスをつくる遺伝情報の全容が記されたマウスゲノムがあります。

情報には必ず作成者の意図があります。

ヒトゲノムに記された遺伝情報にはヒトが存在する意図が込められています。

マウスゲノムに記された遺伝情報にはマウスが存在する意図が込められています。

ヒトはマウスなどヒト以外の生き物と明らかに異なる生態を発揮するための遺伝情報をゲノムに記されています。

肉体的に存続するための能力に大きな違いはありませんが、社会集団で他人と協調して存続するための承認欲求を追求することがヒトの遺伝情報に込められた意図のように思います。

承認欲求は、役に立って他人から認められたい、自分の存在価値を自ら認めたいという欲求です。

承認欲求を満たすためにヒトは目標を立て自ら行動し、目標達成したときに欲求を満たすとともに遺伝情報に込められた意図を達成して幸福を感じるのではないでしょうか。

近年、利己的な自己顕示欲を利他的な承認欲求と詐る独裁者が多数の自国民や他国民の命を独裁者の保身のための戦争で奪っている行為は、ヒトの遺伝情報に込められた意図に背く不遜なものであり、人類の存続を否定する万死に値する大罪であります。

ヒトは一つの細胞さえつくれないという事実を認識して謙虚になり、多くの国民が遺伝情報に真摯に耳を傾け、それに込められたヒトの存在意図に従って行動することが、独裁者に国の統治を委ねず、国民自らが国を統治するための重要な基礎であると思います。

中間層が国家を創る

岸田首相は、「新しい資本主義で中間層を分厚くする。」を政権公約の一つにしました。

米民主党のハリス大統領候補は、中間層底上げを経済政策の柱に掲げました。

中間層は大雑把に定義すると、所得が一定の範囲にある人々の集団で、所得水準が富裕層と貧困層との中間に位置します。

OECD全体での中間層の人口割合は約61%であります。

ちなみに1位はアイスランドで約72%、日本は35カ国中14位で約65%、アメリカは下から3番目で約50%です。

独裁国家の中国では約40%,ロシアでは約35%です。

世界一の人口を擁する発展途上国のインドでは約33%です。

トランプを支持する共和党員の姿を見ていると、米国で中間層の割合が減少している悲劇を窺い知ることが出来ます。

統計学的に言えば、母集団の中間部分の要素の性状が母集団の本質を示す場合が多いです。

人格形成と暮らしぶりとは強く影響し合うので、人口比率が最大の中間層の性状が人類の本質を示すと考えてもよいでしょう。

しかし、独裁国家では、中間層の思想・行動は、教育や国家権力によって規制されるので、独裁国家の中間層の性状は人類の本質の歪んだものになります。

インドでの中間層の人口比率がインド経済の発展によって増大することは、独裁者に性状を毒されていない中間層の世界での人口比率の増大をもたらします。

これにより人類の本質を発揮して生きる人々の影響力が増し、戦争の抑止、世界の平和、人類の幸福に繋がると思います。

中間層の性状は、普通の才能を持つ人が、他人を助け助けられながら自分の成したいことを努力して成し遂げたことに喜びを感じる現役中間層が持つ平凡な欲望、性状ではないでしょうか。

富裕層の性状は、一概には言えませんが、特異な才能や環境に恵まれた人の若干自己中心的な傾向があるような気がします。

多くの富裕層が互助精神を発揮して貧困層に富を配分して欲しいものです。

貧困層の性状は、さまざまな性状が混在していて一様ではありませんが、恵まれない環境下で形成された社会への適応性が低い傾向がある気がします。

人々の協力を得ながら恵まれない環境を克服し貧困層から脱出することが望まれます。

中間層の性状を持つ人々は、現在どの層に属するかに拘わらず、中間層の性状こそ人類の本質であるとの認識と自信を持って、自分の成したいことに挑戦したいものです。 さらに政治に積極的に参画して中間層に有利な政策を実現し、延いては発展途上国や独裁体制下の中間層に働きかけて自由体制下の中間層の影響力を増大し、より多くの人々が自分の性状を活かして生き生きと生活できる社会を世界に拡散することが求められています。

不安や恐怖が多く混沌とした時代をどのように生きるか

我々は今、世界各国の異常気象が示す地球温暖化、地震の頻発、民主主義体制の後退と独裁体制国家の横暴、各国の右傾化、利己的政治家の増加、貧富差の拡大、戦争の常態化、核の脅威、物価高、株価の乱高下、企業モラルの低下、コロナ感染、高齢化など不安や恐怖に満ちた混沌とした時代の中にいます。

長い歴史のなかで人々は現在のような不安や恐怖に満ちた時代を幾度となく経験し、上手に対処して楽しく生きる術を習得してきたと思います。

社会文化の進歩にともない不安や恐怖の原因や質が変化し、過去の対処法が必ずしも現在に適用できないと思いながらも生成AIで 「不安や恐怖が多く混沌とした時代をどのように生きるか」と質問しました。

それなりの回答が返ってきましたが、対症療法的で不安が残ります。

不安や恐怖の根源は人一人では如何ともしがたい大問題が束になって襲いかかってきていることです。

どうにもならないことを一人で早急に解決しようと試みるのは愚かです。

行動し成功して自信を付け失敗して考えるという人の習性に従い、先ず平凡な日常生活を規則正しく送り、些細な変化に気づいて喜びを実感することが、このような時代を心豊かに生きる手始めではないでしょうか。

そんな日々の生活を送りながら新しいチャレンジに成功と失敗を繰り返し自分と自信を得た人々がつくる社会は、人々が互いに尊重し協力し、一人では目を背けたくなる大きな課題も自信を持って時間を掛けて着実に解決できると信じています。

 ご参考までに生成AIの回答は次のようなものでした。

混沌とした時代に生きることは、確かに挑戦的ですね。不安や恐怖が私たちを包み込むこともありますが、いくつかのアプローチで心のバランスを保ちながら前進できるかもしれません。

自己ケアを大切にすること: 不安や恐怖が増すと、体調や精神的な健康に影響を及ぼすことがあります。日々の生活で自分自身を大切にし、適切な休息を取ることを心がけましょう。瞑想や深呼吸、ヨガなどのリラクゼーション方法も試してみる価値があります。

情報の選別: ニュースやSNSからの情報は、不安を増幅させることがあります。信頼性のある情報源を選び、過度に刺激を受けないようにしましょう。また、情報を受け入れる前に自分の感情と向き合い、冷静に判断することも大切です。

共感とつながり: 他人とのつながりを大切にしましょう。友人や家族と話すことで、不安や恐怖を共有し、支え合うことができます。また、コミュニティや趣味のグループに参加することで、新たなつながりを築くこともできます。

目的を見つけること: 人生には目的が必要です。自分が何を大切にしているのか、何に貢献したいのかを考えてみてください。目的があれば、混沌とした時代でも前向きに行動できるでしょう。

最後に、私たちは皆、同じ船に乗っています。不安や恐怖を共有し、お互いに支え合いながら、この混沌とした時代を乗り越えていけるはずです。あなたが大丈夫であることを信じています。どんなことでも話しかけてくださいね!

戦争は悪である

人間社会に戦争という病がいまだに蔓延し、世界中に感染する恐れさえあります。

戦争の病原体と対処法について多くの人が我が事として真剣に考える必要があると思います。

1932年の二人の超偉人アインシュタインとフロイトの往復書簡『ひとはなぜ戦争をするのか』に束縛され、あるいは諦観を抱かされてか、このテーマが具体的に論じられることが少ない気がします。

アインシュタインの「人間を戦争というくびきから解き放つことはできるのか?」の問いに対するフロイトの答えは「人間から攻撃的な性質を取り除くなど、できそうにもない!」後に、「文化の発展を促せば、戦争の終焉ヘ向けて歩み出すことができる!」でした。

その7年後に第二次世界大戦が勃発し、現在もウクライナ戦争、イスラエル・ガザ戦争など止むことがありません。

文化が最も発展した国の一つと思われるアメリカの大統領候補トランプ氏の本能的欲求から発せられる対立候補に対する非難、中傷、それを無意識に熱狂的に支持する支持者を見ていると、文化とは程遠い現状にむなしさを感じます。

しかし、勇気を絞ってアインシュタインとフロイトの答えを具体化して実行する方策を各国民が考えなければならない緊急時に差し掛かっているのではないでしょうか。

各国民が戦争防止策を議論し、戦争に関して持っている、無意識下にある道徳的な規範(超自我)、本能的な欲求(イド)、両者のバランスを調整する自己意識(自我)を再認識するだけでも戦争の抑制に繋がると思います。

例えば、ロシアの侵攻に対するウクライナの応戦は、ウクライナ国民のイド(生きる、独立、自由、誇りなどの無意識下の欲求)が超自我(戦争は国民の命、生活を犠牲にするので最悪とする無意識下の規範)を超えるので、自我がやむを得ないこととしているのだと考えます。

ロシアのウクライナ侵攻については、反体制ロシア国民の自我は、プーチンのイド(権力指向、百歩譲ってロシアの防衛機制)は良識あるロシア国民の超自我に対する詭弁であり、ウクライナ侵攻は許されるものでないとしているでしょう。

米国共和党員のトランプ支持を見ていると、共和党は正しいという常日頃は無意識下にある超自我が大統領選挙中には強く意識され、共和党員の自我がトランプ候補は不道徳という超自我より共和党勝利というイドに偏向しているのだと思います。

このような非定常時にも人々の自我が一つのイドに捕らわれることなく、イドと超自我との正しいバランスのとれた判断を行えるようにするために、無意識下にある他の超自我と、それに基づくイドを認識させることが大切です。

例えば、トランプ候補が大統領になると独裁体制を築き、民主主義が危険に晒される可能性があるとの正確性の高い情報が世に出ると、多くの共和党員の自我は民主主義を守るというイドを共和党勝利というイドより優先させるでしょう。

世界各国で戦争は国民の命、生活を犠牲にするものであり絶対に行ってはならないということを幼少時から教育して意識しやすい超自我にするとともに平和の大切さを常に訴えることによって、国民の自我が戦争指向の政策を選択することはなくなると思います。

一例として、先端技術の憲法AIを用いて社会情勢を分析し、確率の高い分析結果を公表して人々に意識させることによって、人々の自我が一つのイドに捕らわれることなく、イドと超自我とを正しく調整し、常に平和指向な判断を可能とするシステムの実現が必要です。

憲法AI支援民主主義

農耕革命以降、人類は小国家を築いて領土拡張や資源確保、差別や宗教などのために国家間で戦争を繰り返し、国威高揚を価値観のベースに据え、殆どの国で国家主義体制が取られてきました。

産業革命によって、生産性が飛躍的に向上し、働く人々の権利を守ろうとする社会 主義思想や人民主権が提唱されるようになり、民主主義国家が隆盛になりました。

しかし、現在でも民主主義国家に内在する不公平や矛盾により人民の不満は解消されていません。

因みに現在の若者、中年、老年の不満をChatGPTで調べたところ、次のようでした。

若者の不満:

経済的な不安、社会の不公平、環境問題への関心、政治への不信感

中年の不満:

キャリアと仕事の不安定さ、家族や個人生活のバランス、健康問題と生活習慣、社会的地位と自己実現、経済的な不安

老人の不満:

経済的な不安、健康と医療、孤立と社会的孤独、高齢差別や理解不足、住環境の問題

国会議員が政治資金を如何に不明瞭に収集・使用するかの方策に国会の大切な時間を浪費するのではなく、人民主権の価値観のもと国民の不満を如何に解消するかの方策に有効使用していただきたいものです。

国民の不満が許容値を超えると、民主主義が崩壊し、独裁者が台頭した史実もあります。

国民に人民主権の思想が行き渡らず、現在においても国家主義体制を継続している国も多数あります。

民主主義体制は不合理な面もあり、金もかかりますが、国民が窮地に陥って民主主義体制を否定し、中国、ロシア、北朝鮮などをほくそ笑ますことは絶対にあってはなりません。

情報革命が進み、生成AIが加速度的に実用化されている現在、憲法AI(Constitutional AI)が注目されています。

憲法AIは、最後にしたい第二次世界大戦を教訓にして作成された国連の「世界人権宣言」など人類が守るべきいくつかの指針に基づいてモデルを訓練した有益性と安全性のバランスを高めた生成AIです。

憲法の中身や運用方法に万全の注意を払う必要がありますが、憲法AIを活用して、生産性やコミュニケーションなどを大改善し、国民の経済、健康、環境、政治、自己実現、孤独などの不満を解消するとともに、戦争によらないで国際紛争を叡智で解決することができる、憲法AI支援民主主義(Constitutional AI aided Democracy)を実現したいものです。

幸福になるために

丹羽宇一郎氏の著作「人生の価値は最後に決まる!」には、人間の本当の幸福は、仕事で上手くいくとか、 金持ちになるとかの物差しだけで測れるものではなく、 人生の最後に心安らかでいられることだと述べられています。

幸福とは何なのでしょうか。

心安らかな状態とは欲求が満たされている状態でしょう。

欲求には物質的なものと精神的なものがあります。

物質的な欲求は、食欲、金銭欲などで、身体を快適に維持したいと望む欲です。

精神的な欲求は、探究心、向上心、貢献欲などで、自分が成したいことを成し遂げたいと欲する心です。

人は生まれながらにして得意とする能力や生活環境を異にしており、欲求も個性に富んだものとなるのが必然です。

人生は就学期、就労期、老齢期の三つのステージに大きく区分できます。

人間は各ステージにおける身体・精神的な状態と社会的な役割が異なるので、欲求も各ステージに合ったものであるのが必然です。

このような条件を満たした各自の欲求に向かって順次目標を立て自らの力で目標達成したときに人は幸福を感じます。

就学期は学習欲が旺盛であるので、本人の興味を中心に学習欲を満足させて自ら学ぶ心を取得させることが周りに求められます。

本人が気付きにくい、人は何のためにどのように生きるかなどについても就学期に自ら学習して考えさせる環境を提供し誘導することが家庭や学校の務めです。

就労期は働いて自らが物質・精神的欲求を満たしながら社会に貢献する責任が生じます。

就労期ともなれば自分の欲求も確立してきますが、成したいことと働くために成すこととの乖離を埋める努力が必要なこともあります。

当初は成したいことと異なっていた働くために成すことも、努力による成功体験の繰り返しで成したいことに変わるでしょう。

成したいことへの思いが吹っ切れない場合は、休日に成したいことを追い求め、老齢期に熱中するとの割り切り方もあります。

老齢期は、身体・精神的に弱体化していますが、長年の経験を活かして今までできなかったが成したかったことを成したいことに設定し、これに向かって低い目標を順次立てて達成していくことに幸福を感じるのがよいと思います。

老齢期に入る実年令は個人差がありますが、老害にならないうちに成したいことを設定し直すのが幸せへの道でしょう。

自ら学ぶ楽しさ、成したい目標を達成する喜び、感謝や思いやりの心などを子供に教え、職場では成したいことを仕事上で実現し、退職後は就労期の蓄えで物質的に不安なく、やり残したことをマイペースで行える人生を成したいことの一つに設定する人が増えると日本人の幸福度も高くなるでしょう。

人間の多様性

孫からピアノの手ほどきを受けたときに教えられた五線譜に人間の多様性を再確認しました。

音は発生しては消滅し物理的に残存しません。

5本の平行線だけでは何の意味も持ちません。

人は、5線上に書かれた音部記号の書き初め位置を基準音の高さとし、心地よい音の高さを5本の平行線上に示した音符で示すことなどによって、音の芸術である音楽を作曲者の創作時の状態で時間的、空間的に離れた多くの人々の間で共有できる楽譜を創出しました。

楽譜の創出によって音楽世界の表現技術が多様かつ高度に発達し、多くの音楽家が自分の成したいことを音楽に見つけ夢を追い求めて努力しています。

楽譜で音楽の抽象化が進むと実際の楽器では演奏できない音楽を楽譜の中で奏でて楽しんでいる人があるかもしれません。

このようにヒトは基礎となる僅かな約束事の上に無限に広がる深淵な世界を次から次に創り出し、人々は自分の好きな世界の中に成したいことを見つけて楽しく生きることができるもののようです。

ヒトは物事を表現し多くの人々の間で共有できる言葉を創り、科学、文学、哲学、思想などの分野で自己実現に励んできました。

自然科学の世界では、物の量を表す数を生みだし、広くて深く未だに拡大している数学の世界を創り出し、人々は数学の世界を楽しみながら物質の世界で利用し物質的な生活の向上に役立てています。

また、9×9のマス目上での8種類の駒の動き方などを約束しただけの将棋は、知性に富んだ棋士がスーパーコンピュータまで駆り出して人生を賭けて研究する棋界を作っています。

11人に分かれた二つのチームが一つのボールを相手ゴールに蹴り入れれば得点1となるなどの僅かなルールが決められたサッカーは、世界の競技人口が約2億6,000万人と言われ、世界トップクラスのプロサッカー選手メッシの2023年の年俸は200億円弱と推定されています。

鬼滅の刃「無限列車編」が公開2週目にして全米週末興行ランキング1位を獲得するほど世界で人気の高い日本のアニメーションは、作成者が理想とする生き様を疑似の世界でキャラクターに投影し、鑑賞者がキャラクターの感動的な生き方に共感し勇気づけられるのでしょう。

個性に多様性を秘めたヒトは、多様性をそれぞれ発揮して生きる喜びを享受するために様々な世界を作ってきたように思います。

昨今、民主主義国家では弱者救済あるいは倫理上の観点から多様性を尊重することが求められていますが、多様性は生きる世界を次々に創るヒトの本質のように思います。

全く多様性がなく変化しない「存在」は「無」と同じです。

人は自分に適した世界で独自性を発揮して生きる喜び実感し、「無」に対峙する「存在」を多様性のある変化で具現化するものである気がします。

多様な価値を認め自分の価値を大切に生きる

宮崎駿監督の新作アニメ「君たちはどう生きるか」を鑑賞して、矛盾や不条理に満ちた現世を肯定し、個人の二律背反する多様な価値のバランスを取って他人と共に平和に生きる大切さを共感することが出来ました。

二律背反する価値の選択は、例えば漱石の草枕の書き出し「智に働けば角が立つ情に棹させば流される」とあるように人生の節々で知恵を絞ってバランスよく案配しなければならない古くて新しいテーマのように思います。

アニメは、「理想」を求めすぎることなく「人の弱さや現世欲」も認め他人と協力し誇りを持って幸せに生きてくださいと語りかけている気がしました。

価値の選択において「目的を達成するための手段の価値」を「目的の価値」より高くしてしまって不幸に陥ることが多々起こっています。

例えば技を習得するために「競争に勝つ」ことが「技を習得する」ことより大切になると、競争に勝って全てを失う日大のアメフト部のような不幸を招きます。

「国民が幸せになる」ための「強い国家」の価値を高くし過ぎると、ロシアのウクライナ侵攻のように両国民から日々の幸せを奪い悲惨な生活を強いることになります。

ハマスによるイスラエルへの奇襲攻撃が、「他者への慈愛を説くユダヤ教」に潜在する選民思想をネタニヤフ首相にまざまざと彷彿させ、パレスチナ・ガザ地区からハマス延いてはイスラム教徒を排斥するために、ガザ地区のパレスチナ人民を殺戮し悲惨な状態に陥れる暴挙を行わせている気がします。

首都圏では中学入試が常軌を逸して過酷なようですが、入試に合格するためのテクニックを磨くことに専念させ過ぎると、自分の成したいことを実現するために必要な基礎知識を主体的に学べる実行力に富んだ若者の育成は不可能となるでしょう。

自分の価値観を強い意思で実現することは大きな生きる喜びでありますが、他人の価値観にも謙虚に耳を傾けることを怠ると現世を広く知る機会を失い、あるいは他人の尊厳を傷つけて大切な交友を失う羽目になります。

また、人生の目的を大志として具体的に設定し、その達成に向かって努力することは充実した日々を過ごすうえで有効でしょう。

しかし、大志を例えば「ノーベル賞を受賞する」などと具体的に高く設定し過ぎると、多くの人は年齢を重ねるうちに現実とのギャップから大志を忘れ去り、人生を漫然と送ってしまうことに繋がりかねません。

大志を例えば「多くの人に役に立てる学者になる」などとして曖昧さを残しておくと、大志を達成するための手段を目標として自分の成長段階に合わせて順次設定し、大志を忘れることなく目標達成を楽しみながら充実した人生を送れるような気がします。

民主主義こそ国民を守る

スウェーデンの研究所によれば、民主的な国は60の国と地域であるのに対し、非民主的な国は119の国と地域に上り、ブラジル、インド、トルコ、ハンガリーなど権威主義的な傾向を強めている国の数が、民主化に向かう国の2倍以上あると報告しています。

「公正な選挙」「基本的人権の尊重」「言論の自由」「多様性」などを尊重する民主体制が、なぜ後退するのか考えてみました。

ヒトは生存するために集団をつくる本性を備えており、集団を作る本来の目的はメンバーの命と生活を守るためだと思います。

優れたリーダーに統率された集団は、メンバーの力を結束して有益な目標を達成し強い集団となり、多数の集団を統合して国をつくりました。

国が強くなるためには強いリーダーを擁する権威主義が有効であることは、国民が同じ方向を向き目的を効率的に達成することができるからだと思います。

しかし、純粋に国民の命と生活を守るための政治を行ったと言われる堯や舜は史記に登場する伝説上の帝王であり実在しないでしょう。

権威主義体制において体制と価値観を異にする人々の命と生活を担保し国力向上にも参画できる仕組みを作ることが一つの理想ではないでしょうか。

ところが権威主義体制では国力向上や国の威信が目的になり、その達成に熱心になり過ぎて全ての国民の命と生活を守るという本来の目的を忘れてしまいます。

また、権威主義は政治的な権力が一部の指導者に集中するので独善、不正、独裁体制誕生の温床になり、ひとたび独裁体制や独裁者が利己的あるいは独善的な自分の価値観を実現するための政治を始めると国民、特に体制と価値観を異にする国民は悲惨な状態に陥ってしまいます。

ヨーロッパにおいては19世紀に個人を国王などの束縛から解放し自由を実現させる自由主義的な改革がなされ、民主主義的な思想も取り入れられて現代民主主義国家が誕生したのに対し、ロシアではニコライ一世が自由主義的革命運動を抑圧して専制君主制を継続しました。

そして、ロシア皇帝は、皇帝の権力によって国民は繁栄と栄光に導かれるという専制主義をロシア国民に信じ込ませロシア大国を統治し続けました。

プーチン独裁者はロシア大国の復活という時代錯誤な独善的な自分の価値観を実現するためにウクライナに侵攻し、ウクライナ人の多数の命と生活を奪うという暴挙を続けています。

ゼレンスキー政権はウクライナ国民の命を守り日常生活を奪還するために28万人弱のロシア兵の命を奪っていますが、国民の命と生活を守るという国の目的を達成するための行為として認められています。

国民が人権、言論、多様性を尊重し、国家権力がその国民によって選出される民主主義は、一部の指導者に国家権力が集中し、国民がそれに盲従する権威主義より国の力や威信高揚の面では効率が悪くなるでしょう。

しかし、ヒトが仲間の命と生活を守るという目的を達成するために集団を作ったという原点に立ち返って考えると、民主主義は、国民が各自の思いを実現する場を確保するという国が果たすべき本来の目的を達成するベターな体制だと思います。

ところが、民主主義の盟主であるアメリカにおいて、権威主義的なトランプ氏の影響を受ける共和党が大統領選に勝つためという利己的な理由でウクライナ支援予算の成立を妨害し、民主主義圏内の一国であるウクライナの国民をプーチンの蛮行から救うことを阻害して民主主義の弱さを露呈しています。

国民の命と生活が確実に守られた状態で、国民が個性を発揮し楽しく生きることで国の力や威信が高められる民主的な国の数が増えることを願っています。

我国は、経済格差の拡大を阻止しつつ国力を増大する経済財政改革、国民のために活動する政治家を選出するための金のかからない選挙制度改革、政治への関心が高く個性豊かな才能を育てる教育改革など民主主義の弱点を是正する施策を果敢に実施し、新しい民主制の豊かな日本を世界に示していきたいものです。