プラトンの理想国家ポリティアに学ぶ

プーチン体制の不正で残虐なウクライナ侵攻を他人事として捉え支持する人が多かったロシア国内において、予備役の部分的動員令が発動され危険が我が身に迫ると、抗議デモや市民の国外脱出で混乱が生じていると報道されています。

このような報道に接し、古代アテナイの哲学者プラトンが描いた理想国家および国民をベースに近代における好ましい国家と国民について考えました。

プラトンの描いた理想国家(ポリティア)は、統治者が理性的な知識で国内外の諸問題を上手く解決し、軍人が勇気をもって国家の安泰を維持し、農工商の産業人が欲望を節制して生産に専念するものです。

国民は、知識、勇気、節制を身に着けて、理想国家実現に資することによって幸福になれるとしています。

アテナイ人にとって、国家は人間の生存基盤であり、非国家的な人間は理想的な人間になることができませんでした。

当時、アテナイでは、後に衆愚政治と揶揄される民主政治が行われており、高い徳も能力もない者が統治者になっていました。

このような病めるアテナイを憂い国家のあるべき姿を描いたものがポリティアです。

統治者、軍人、産業人が夫々の徳を有し各職務に専心すれば、国家の徳である正義が実現されるとしています。

このような最高の徳を身につけた哲人政治家が統治するのであれば、国民も国家の役に立てるように努めるでしょう。

しかし、現実には、徳のない統治者が、名誉や富のために利己的に権力を求め、或いは暴力で権力を取得しようとします。

このような現実下では、プーチンの蛮行を防げない責めはさておき、ロシア人の抗議デモや市民の国外脱出に国家に裏切られた国民の悲哀を感じます。

我が国の現状と理想国家との相違点を洗い出し、相違点を如何にすれば小さくできるか検討することによって国民が幸福で強い日本国をつくる糸口にすることができる気がします。

先ず必要なのは、能力が高く国政に専心できる理想的な政治家の輩出です。

各国民が徳の高い政治家を慎重に選挙で選出する弛まない努力が理想国家に近づく第一歩ではないでしょうか。

現実には哲人政治家は存在しえませんので、選出した政治家の行動を国民が注意深く監視し、利己的な政治活動を諫めなければなりません。

さらに、日本国をよくするために国政に携わることを志す高い能力の人が増えるような土壌も必要です。

現代においてもプーチンのような不正な侵略者が出現する以上、国家の重要な役割は、プラトンの時代と同様に、軍が国民と国土を外敵から守ることです。

自衛隊が国軍として勇気をもって日本国を防衛できる体制を構築しなければなりません。

人間は各自が多様な自己実現能力を発揮してそれぞれの目標を達成し、生きる喜びを創造主とともに共感できると幸福になります。

産業人は、科学、産業、芸術、スポーツ、娯楽などの各分野で、自分の才能や興味に合致した「自分のなりたい姿、社会に貢献できる活動」等を目標として設定し、その目標を達成するための努力と結果に喜びを感じながら国家に貢献します。

現在の日本国とポリティアにおいて国家と国民との関係での大きな相違点は、ポリティアでは産業人は国家のために存在するとしたのに対し、現代の日本では民衆のために国家が存在することではないでしょうか。

哲人政治家が統治するポリティアでは、この相違点が国民に大きな負担を負わすことは無いでしょう。

しかし、徳のないプーチンが統治する全体主義国のロシアでは、国民は不正なウクライナ侵略で命を無意味に落とし、或いは兵役を逃れるために国外に脱出するという不幸を余儀なくされています。

民主主義国の日本においても、民衆が過度に自由を求め、欲望を節制することなく国家の調和を乱す活動を繰り返すと、アテナイで起きたように民主政治から衆愚政治に陥落する不幸に見舞われます。

民衆はプラトンのいうように自分の職務に専念するだけでなく政治に関心を持ち、有能で徳のある政治家を選出し、自分の利益を国政に求めるだけでなく、国家にとって有益な意見を発信し、哲人でありえない政治家をサポートし、理性的な知識をもった統治者に育てる必要があると思います。