国民の大部分を占める庶民の意に反して極めて独善的な独裁体制が21世紀においても出現する不思議を考えてみました。
人間の営みは、寝て起きて食べるために働き、欲することをする中に喜怒哀楽を感じて日常生活を送ることではないでしょうか。
欲することは人によって千差万別ですが、次の5つの欲に大別できると思います。
・他人や社会に貢献すること(貢献欲)
・学芸・スポーツで個人的な能力・成果を高めること(文化欲)
・他人を支配すること(支配欲)
・他人の指示・欲求に従うこと(忠誠欲)
・肉体的・物質的欲求に従うこと(物欲)
各人の5つの欲の強さ割合は、遺伝子、生い立ち、教育、経験等によって決まり、個人の個性を形作るのでしょう。
類は友を呼ぶと言いますが、同じ欲の強い人達が結集し易い傾向にあり、国は、同じ欲の強い人達で緩く形成された5つの集団で成り立っていると思います。
このような状況で、国が存続の危機に面したとき、支配欲の強い集団は、他国に支配されることを強く嫌い、他の集団をリードして戦争に勝利します。
成功体験を味わった集団は支配欲を一層強め、忠誠欲や物欲の強い集団を巻き込んで自国民をも独善的に支配し独裁体制を完成するのではないでしょうか。
独裁体制が内在する腐敗体質によって滅んだ後に樹立された民主的な政治体制において、独裁体制での非人道で独善的、不平等で不自由な政治に対する憤りや恐怖を実感した人の数は時がたつにつれて減少していきます。
このような状況下で国が存亡の機に立たされると、支配欲の強い人達がまたぞろ行動を開始します。
人は感情を伴わないと行動しないので、独裁体制に対する怒りや恐怖を実感していない世代は目前の危機回避に目を奪われ、独裁体制の再現を許してしまうのではないでしょうか。
民主体制を増やし、独裁体制の増殖を抑える方策を文化欲や貢献欲の強い人達が中心になって創出し、社会に仕組むことが必要だと思います。
5つの欲は、人類が自然の脅威や敵を克服して生き続けるための天性であり、個人から無くしてしまうことはできません。
人は誰しも、貢献欲、文化欲、支配欲、忠誠欲、物欲の全てを持っており、その強さ割合によって、貧困や病に苦しむ人々の救済に生涯をささげたマザーテレサのようにも、殺人鬼と呼ばれるプーチンのような独裁者にもなるという現実を全ての人が認識することから始まるでしょう。
5つの欲の強さ割合が極端に偏らないように、貢献欲の強い人は、特に支配欲、文化欲の強い人は忠誠欲、支配欲の強い人は貢献欲、忠誠欲の強い人は支配欲、物欲の強い人は文化欲を増やすような個性にあった子供教育も必要ではないでしょうか。
貧困は国民の不満を煽り、国を窮地に追いやり、支配欲の強い人達が活躍する格好の場を提供します。
民主国家は、貧困国の自立のための経済援助を、独裁国家の貧困国の支配のための経済援助と明確に異なることが分かる形で推進する必要があると思います。
そして、日本だけでなく世界各国において支配欲の強い人達の政治活動には常日頃から警戒し、特に国が窮地に立たされているときは独裁体制に移行する企てを早期に摘まなければなりません。
民主制は国民ひとり一人が保持・育成するものであり、特に、貢献欲、文化欲の強い人達がもっと政治に関心を持ち、自分たちが活躍する場の民主体制を広げていくという覚悟を持つときだと思います。