人は何故いつまでたってもかわれないのか

1.はじめに

心には、喜び、誠実さ、目標への情熱、思いやり、自己肯定感などのプラス面と、悲しみ、嘘、怠惰、利己、悲観などのマイナス面があります。

マイナス面の心は、喜びを感じながら「生きる」と言う欲求が満たされないときにプラス面の心が屈曲して出るもので、強い生命力が逆説的に表現されたものでしょう。

今の社会、マイナス面の心の発露が多く、いつまでたっても紛争を戦争で解決しようとする人々、利己的な社会の指導者、格差、弱者虐待、ひきこもり等の蔓延を見ていると、人はいつまでたっても変われないものなのかなと、なかば諦めそうになります。

否否、核戦争や地球温暖化など現世代の人々の心の未成熟で人類が滅亡の方向に進むことは断じて阻止し、対策を講じなければなりません。人々が心のプラス面を成熟させて生きる喜びを謳歌することが人類の存在意義ではないでしょうか。

2.心を成熟させることが人生の目標

人は、「体」、「知」、「心」の各能力を備えて誕生します。生まれた時は、身体は小さく、何も知らず、生まれたことに感動することもありませんが、全能力とも強い生命力を持っています。

体は、一世で生、老、病、死を経験します。そして、老いた体は若い体より生命力が弱くなります。

知は、前の一世の知識、思考を土台に積み上げていくことができるものであり、特に科学技術は、ここ何世代かに渡って急速に進歩してきました。

18世紀後半にイギリスの鉱山で使用されていた馬車鉄道が、250年ほど後に東京名古屋間で疾走するリニア新幹線までに進化することは、知識が何世代かに渡って急速に積み重ねられた結果だと思います。

知は心の発露に従って自分の価値観を実現するための一つの道具であります。科学技術の進歩につれて生活が便利かつ忙しくなってきましたが、多忙感の中に何か大切なものを置き忘れてきたような気がします。

心は、一世毎に白紙状態からプラス面を伸ばして成長を繰り返すもので、前の一世の心の成熟は参考にはできますが、その上に積み重ねて進歩することはできません。

孔子は、「・・・吾れ十有五にして学に志し、・・・」と言いましたが、2550年ほど経った現在でも、心を「15才で何かに志す状態」まで成長させている若者が如何ほどいるでしょうか。

心は自分の価値観を実現して人から喜ばれることにより琢磨され、これによって自分を信じ、人から信頼される状態まで成熟し、さらなる努力によって維持向上できるものと思います。このように、各人が心の成熟を目標にしてそれぞれ異なる道を歩み、ときに喜びを感じることが、まさしく各自の生きざまのような気がします。

2-1 心と知のバランス

産業革命以降に何世代に渡って急速に積み重ねられた知の結晶であるハイテク社会に一世毎の心の成長で対応するためには、幼少時から心の教育を家庭や社会で行って心の成長を促進する必要があると思います。

人は真、善、美を識別する潜在能力を備えて生まれてきますが、真、善、美を具体的に感受し表現する能力である心は、学習によって成長していくものであると思います。

しかし、今、何のためにどのように生きるのか、愛情や信頼や志とは何かなどの心に関する教育が十分になされていない気がします。

幼児教育・保育の無償化だけでなく、幼少時から心の教育を家庭や社会で行うことが必要だと思います。

心を鍛錬して成功した実業家、芸術家、スポーツ選手など各界の成功者が各地の小学校などで心について講演する仕組みを作ると、多くの親子が聴講して心の大切さを親子で素直に認識することができるようになると思います。

社会の価値観を権力、経済、勝利至上主義から協調、芸術、フェアウェイ精神に少しシフトすることも有効ではないでしょうか。

また、民主主義や子供の心の教育に百害あって一利なしの利己的で不誠実な政治家を選出しないことも必要でしょう。

2-2 心と体のバランス

体の状態は一世中に変化します。

心の発露に従ってそのときの体の状態に応じた目標を設定して活動することが、体とバランスした心の成長であると思います。

3.おわりに   

スウェーデンの16歳の少女グレタ・トゥンベリは、子どもの未来を地球温暖化で奪わないでくださいと呼びかけています。ノーベル平和賞受賞の女性活動家マララ・ユスフザイは、少女に教育を与える運動を続けています。

日本のスポーツ界などでも若い選手が心を鍛錬して活躍するケースが増えています。心の大切さを啓蒙、認識する機会を増やして、老若男女を問わず多くの人々が心の成熟を目標にして自分の価値観の実現のために行動するようになれば、生きる喜びに満ちた社会を永続できるでしょう。

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