支配者による統治は、約1万年前に農耕が始まり土地と財の所有が発生し、人の煩悩の発露である紛争を解決し秩序を維持する必要が生じたときに始まりました。
ホッブス(17世紀)は、人は自然状態では煩悩に支配され互いに争うので、安全のために権力者ひいては国家に統治を委ねたと言っています。
煩悩は、欲望・怒り・無知といった「生存の衝動」のかたちで現れる、生きようとする意志であり、生存と人間らしく生きるエネルギーとなります。
人が煩悩を制御することなく放任すると、互いに敵対して殺戮を繰り返す「滅亡の衝動」となります。
欲望が理性を超え、怒りが慈悲を忘れ、無知が真理を覆うとき、人は他者を敵とみなし、傷つけ合います。
ところが、人は、煩悩を認めエネルギーとして制御し、自分の成したいことを他人と協力して成すことに喜びを感じる「人間らしく生きる衝動」を備えています。
滅亡の衝動を抑え、人間らしく生きる衝動を安全に発揮して、人の存在意義と繁栄を確保するために、人類は集団社会、国家を形成して国民を統治し、権力、法律、社会慣習で滅亡の衝動を制御しています。
農耕草創期の良識ある紛争裁き役が、国の誕生で王になり、時代が進むにつれて権力を集中し煩悩に囚われて民衆を支配しました。
産業革命によって生産性が飛躍的に向上し、民衆の権利を守ろうとする人民主権がルソーによって提唱され、民主主義国家が誕生しました。
民主主義国家といえども、選出された為政者が煩悩に囚われ、自由・平等・安全という公共の責務を忘れたとき、国家は自国の利益のみを追う利己的な体制へと転落し、国益の名のもとに、戦争という地獄絵を現実に描き出します。
21世紀になっても戦争が絶えることがないのは、煩悩を制御できない為政者が厳しい国難に直面したとき、支配欲・恐怖・無知といった煩悩に支配され、一部の民衆と煩悩を共鳴して国益を守るという名目で戦争を起こし、滅亡の衝動を現実化するためだと思います。
世界中の人々が人間らしく生きる衝動を具現化して人間の存在意義を達成するためには、以下に例示するような戦争抑止の具体策を常に実行しなければならないと考えます。
・民衆が為政者の言動を注意深く監視し、煩悩を制御する能力の低い人を為政者に選出しない。
・戦争は国難時に為政者の支配欲・恐怖・無知といった煩悩に民衆の煩悩が愚かにも共鳴したときに起こるということを、史実も含めて広く国民に継続的に教育する。
・大多数の民衆が、煩悩を正しく認めた上でエネルギーとして制御し、人間らしく生きる衝動を発露して人生を楽しむ。
・煩悩をあるがままに認めたとき、他国の為政者の滅亡の衝動を抑止するための防衛力は必要である。
・民衆による国際的文化交流は為政者の煩悩を凌駕する。
戦争を抑止するには、国民が煩悩を否定せず正しく認めた上でエネルギーとして制御し、人間らしく生きることを楽しんで人間の存在意義を達成することがベースになると考えます。
